妹は、もらった人形を一つ一つ大事にスカートのポケットに入れていました。
「この人は、とても上品な人でマダムノエルというんだ。彼女は歌がとても上手で ね。美しい声で歌ってくれるんだよ。」
どんな歌でしょう? 妹は、その歌声を聞いてみたくなりました。人形を手にしてみと、頭に銀色の髪飾りをして、手には金色のベルを持っています。
「やさしそうな人だわ。お母さんに少し似てるみたい。」そう思って、人形をポケッ トにしまい込むと、ふとこんなことを考えました。
「でも、どうしてこんなにいろいろなお話しを知ってるんだろう・・・ニコラス神父様も クリスマスが大好きなのかしら。」
「もちろん大好きだよ。さあ、つぎは、これ。」
そう言われて妹は、びっくりしました!今、自分が心の中で思ったことに答えてくれたからです!
どうしてなの?妹は、聞きたいと思いましたが、次にもらった深みどり色の人形を見たら忘れてしまいました。それは、まるでクリスマスツリーのような服を着た背の高いおじいさんの人形でした。
「これは、ファザークリスマスといってイギリスの地方のサンタでね、ツリーと食べ 物をかごにかついで、いつでもどこでもクリスマスパーティーを開いてしまう楽し いことが大好きなサンタなんだよ。」
「楽しいサンタさんね。パーティーが大好きなのは、うちのお父さんに似ているわ。 」妹がその人形を穴のあくほど見ていると、
「じゃあ、これは誰に似ているかな?」
おじいさんが、笑いながら取り出した人形を見て妹は、アッと驚きました!なぜって、目の前でニコニコ笑っているニコラス神父をそのまま小さくしたようにそっくりな人形が、手の中にあったからです。
「もしかしたら、このお人形の名前はニコラスさん?」
妹はそんなはずはないと思って 聞いてみました。
「そのとおりだよ!」ニコラス神父は、まだ笑っています。
「驚いたかね?」
「ええ、だってそっくりなんだもの。」
妹は、手の中のおじいさんの人形をみつめました。紫色のガウンの中は、白い服を着ていて、首からは、大きなネックレスを下げているし、だいいち服と同じ色の先のとんがった帽子まで同じです。
「ニコラス神父様も、サンタさんなの?」妹は、思いきって聞いてみました。
「お嬢ちゃんは、どう思うのかな?」
おじいさんは、それには答えずに笑って言いま した。
妹は、なんだか不思議な気持ちになりました。そこへ、お母さんが通りかかリ、ニコラス神父に話しかけました。
「あらあら、相手になっていただいて、お邪魔しているんじゃないかしら。」
「いやいや、楽しくお話ししているんですよ。世界のサンタさんについてね。」
妹は、今もらったニコラス神父様そっくりの人形を、あわててポケットのなかにしまいました。なぜだか、お母さんに見つからないようにしなければいけないような気がしたからです。
「お話しがすんだら、もう寝る仕度をするんですよ。」
お母さんが、人さし指を口に当て云いました。
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