時計が十二時になりました。 ざわざわと話し声がしてお兄さんは目覚めました。何やら柔らかいものが、ほほに当たるので妹も目覚めました。どうやら二人は、疲れて妹の部屋で眠ってしまったようでした。二人が、眠い目をこすってよく見てみるとたくさんの人が部屋に入っていました。
「急がないと今夜のうちに終わらないよ!」
「配るお家を分担せずに、みんなで一緒に飛べばスピードが速くなるよ。」
「それじゃあ、一緒に配ろう。」
「そうだ。一緒に飛ぼう!!」
妹のほほに当たっていたのは、ホウキの先でした。二人は、部屋の窓が開いていて月の光が差し込んでいたのでのでようやく目が慣れてきました。人々は、開いている窓に向かって何かを話しているようですが、妹に当たっていたホウキの先が、今度は鼻 をくすぐりました。
「ハクション!!」
妹が思わずくしゃみをしたとたん、部屋にいた人々が、いっせいに振り返りました。
「あ・ごめんなさい。」
妹とお兄さんは、横になっていた体をおそるおそる起こしました。誰かがつけた明りの中に人々の顔が照らし出されましたが、みんな笑っているようで した。
「こちらこそ、起こしてしまってごめんなさいね。」
やさしい声の主は、あのお母さんに似ているノエルさんのようです。うすむらさき色のドレスを着て、頭には、銀色の髪飾りをつけています。
「あなたは、マダムノエルさん?」妹は、小声でたずねました。
「そのとおり!!おぼえてくれたね、お嬢ちゃん。」
「あっ、ニコラス神父様!!」お兄さんと妹は、一緒に叫びました。
それは、もう間違いなくニコラス神父でした。さっきまで、サンタのお人形のお話しをしていたその人でした。
「でも、どうして?」
妹は、寝る前にお人形を並べた机の方へかけよってみると、お人形もソリもバイクやスポーツカーもありません。
「ねえ、早くしないと遅くなっちゃうよ!!」
窓の外から小さな男の子が、呼んでいます。背中の白い羽をぱたぱたと動かして飛んでいました。お兄さんと妹は、すぐにキントだとわかりました。
「ニコラ、時間が無いけど説明してあげてください。二人ともびっくりしてかわいそう だわ。」
そう云ったのは、光のサンタ、ルチアでした。さっきからまぶしいくらいに部屋が明るかったのは、ルチアが持っているステキなつえの先が光っているからでした。
「そうだよ、僕たち素晴しい乗り物を借りるんだもの、理由をは話さなくちゃ。」
「そうそう、カッコイイバイクをね。僕なんか自分の羽で飛んでけってサ!」
窓から キントが少し口をとがらせて言いました。
「文句をいうんじゃありませんよ。」
そういってまたがっていたホウキの枝を床にトンと鳴らしたのは、ベファーナでした。さっきまで妹のほほに触れていたのは、この先でした。
「それじゃあ、話をしよう。二人とも、私が今から話すことを秘密にできるかね?」
心配そうにのぞきこまれて、二人はこくりとうなずきました。
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