サンタクロースが乗っているそりが一番先に出発するようです。
「おおーい。がんばってねー!」
「落っこちないように、気をつけてねー!」
二人は、手を振りながら叫ぶと皆、こちらを見て手を振っています。いいえ、それだけではないようです。皆、何か言っているようですが、よく聞こえません。そのうち、小さな女の子が乗った木馬が光りに包まれて近づいてきました。白いケープを着た三つ編みの女の子ロチアでした。
「かわいい木馬をありがとう。」女の子は、恥ずかしそうにいいました。
「みんなが、一緒に行こうって言ってるんだけど、行かない?」
二人は、顔を見合わせて
「行くよ!もちろん!つれてって!!」といいました。
「じゃあ、この木馬につかまって!」
二人は、窓から木馬にぶら下がるようにつかまると、木馬はガクンと動いてからみんなの方へゆっくりと動き出しました。二人は、そこからニコラス神父の金色に光るゴンドラ船に乗りこみました。
「お二人さん、ちょっと急ぐから、落っこちないでおくれよ!」
「はーい」
二人は、ゴンドラ船の外を見ました。確かに自分達の家が下のほうにあります。パーティが開かれている部屋の灯りは、まだ灯いています。二人が学校へ行く通りも、その先にある教会の塔も見えました。
「コチラ、サンタクロース、ニコラサンドウゾ」なんと無線がはいりました。
「はい、ニコラどうぞ」
「シュッッパツシマスヨ!イイデスカ?ドーゾ」」
「オーケー、カウントダウンしてください。どーぞ。」
「3、2、1、シュッパーツ!!」
無線は、他のサンタ達も持っているのでしょう、いっせいに光が明るくなり、あっという間にスピードがあがってきました。二人は、歓声をあげて大喜びです。
ここから見下ろす街の景色は、星空のようにとても美しいものでした。
二人の周りには、スクーターに乗ったマダムノエル、バイクに乗っているバレン、木馬のロチア、ホウキにまたがったベファーナ、パタパタと飛んでいるキントが上になったり、下になったりして飛んでいます。
一番先頭は、やはりサンタクロース。妹の積み木トナカイもがんばってそりをひっぱっています。ニコラス神父のゴンドラの後ろには、ルチアの黄色いスポーツカーで、その後ろが、マロースの冷凍トラック、最後にファザークリスマスのトレーラーです。ぐんぐんスピードをつけてみんなは、光のかたまりになっていきました。
「空の旅はどうかね?」
すっかり楽しんでいる様子の二人にニコラス神父が声をかけました。
「とってもきれい!!」妹が答えると、お兄さんも
「サイコー!!楽しいよ。」と大声でいいました。
バイクにまたがったバレンが近ずいてきて、
「チョコレート食べる?」とほおり投げてくれたので、お兄さんはチョコレートを口に入れて、バレンにこういいました。
「ぼくも、バイクに乗せてよー!」
「いいよ!おいで」お兄さんは立ち上がり、バレンの後ろに飛び乗りました。
バレンは宙返りをしたり、お家の屋根すれすれに飛んだりしたので、危うく落っこちそうになりましたが、スリル満点でした。妹は、下に広がる街の景色を、うっとりと見ています。
すると、何処からともなく美しい歌声が聞こえてきました。無線でもラジオでもありません。それは、マダムノエルの歌声でした。コーラスは、キントのそばを飛んでいる天使達で、透き通るようなハーモニーを重ねています。
「ああステキな歌声ね。マダムノエルの歌が聞けてよかったわ。」
「それは良かった。君達は、ゆっくり楽しんでるがいいよ。私たちは、プレゼントを ドンドン配っているからね。」
「え?」ニコラス神父の声に妹は、聞き返しました。
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